新北葛谷野歌

新北葛谷野歌
『葛谷野歌』が歌われている全羅南道霊岩郡新北面葛谷里は、広大な羅州平野と接している典型的な農村である。住民のほとんどが農業で生計を立ててきたため、南道地方に伝わる野歌の原形がそのまま残っていたが、農村の機械化が進むにつれ、次第に忘れ去られようとしていた。

『葛谷野歌』の場合、イ・ソラ文化財庁文化財専門委員が霊岩民謡を調査・整理する中、無形文化財指定を申請したユ・スンリムによって採録され、その価値が認められるようになった。特に、2004年には第45回韓国民俗芸術祭りで大統領賞を受賞し、歌い手のユ・スンリムと共に葛谷野歌保存の重要性が一層認識されるようになった。

『葛谷野歌』には、南道地方の農謡(農民たちが歌う民謡)ではめったにない採苗歌が、原形そのままで残っている。以前はよく歌われた採苗歌だが、次第に消えつつあり、最近ではごくわずかな地方にのみ残っている非常に貴重なものになってしまった。幸いにして葛谷野歌には原形のまま残っているため、全羅南道中部地方における採苗歌の実体を明らかにする実例となり得る、貴重な資料。

『葛谷野歌』には、「午前野良仕事」と「午後野良仕事」という独特な名称の草取り歌がある。このような曲名は、伝統的な農謡の形式にとらわれない葛谷里ならではの特徴である。伝統的な農謡では、一回目草取りと二回目草取りの歌がそれぞれ異なるのに対し、葛谷里では、一日中同じ歌を歌って作業するよりも、午前と午後で異なる歌を歌うほうが草取りがはかどると判断したようだ。非常に独特な、葛谷里住民ならではの生き方がよく表れた実例である。

『葛谷野歌』の鳥追い歌は、農謡ではめったに使われない3拍子(trtiple rhythm)と2拍子(duple rhythm)が組み合わさった不定格5拍子のリズムで構成されているが、これは全体的に動作を一致させることで仕事の能率を上げようとする農謡としては珍しい。

この5拍子は不定格の「六大綱」から一部を抜き出して派生したリズムで、申快童流玄琴散調と金炳昊流伽倻琴散調に登場し、沈清歌と興夫歌の「衆下りてくる場面」や赤壁歌の「白大将登場場面」に使われる。

特に、民俗音楽で使われる「オッモリ」リズムと同じ構成で、全羅道の舞歌に使われる「シニム」リズムとも似通っており、東海岸の舞歌にも使われていることから、比較的長い歴史を持ち古くに成立したリズムであると推定される。

このように葛谷野歌は、南道地方の農謡が持つ多様な特徴を内包しつつ、葛谷野歌ならではの特徴も併せ持つ非常に独特な農謡で、ユ・スンリムによって受け継がれ、最近では第45回韓国民俗芸術祭りで大統領賞を受賞してその価値が認められた。

葛谷野歌の構成

採苗歌
田植え歌
草取り歌
  • 一回目草取り(午前野良仕事歌、午後野良仕事歌)
  • 二回目草取り(午前野良仕事歌、午後野良仕事歌)
  • 最後の草取り(鳥追い歌)
壮元農楽歌(アロンデロン)